【開催報告】ママドラフト会議10周年 大同窓会を開催しました
再就職を希望する子育て期の女性たちが、企業の採用担当や観覧者に向けて自身のスキルや希望する働き方をスピーチする「ママドラフト会議」。2014年に第1回が開催されると、眠れるママ人材と企業を直接繋ぐ画期的な試みとしてメディアにも取り上げられ、大きな反響を呼びました。
「私たちも開催したい」という声に応えて、福岡を飛び出して山口県や広島県、東京都などでも共催。また、コロナ禍や働き方の多様化も受けて、テレワークを前提としたオンラインでの開催もありました。
10年間で開催回数は30回、参加女性は548人、参加企業はのべ714社にのぼります(2024年5月27日時点)。勇気を出して登壇してくださったママたちをはじめ、登壇者に伴走してくださったコンシェルジュやキャリアコーチ、開催パートナー、サポーターの方々に感謝を伝えたいと、このたび福岡市博多区内のレストランon A TABLEにて大同窓会を開催しました。
当日は、50名が参加。熊本県や広島県など遠方から駆け付けてくださった方もいて、開会前から再会を喜ぶ声があちらこちらで上がりました。
開会にあたり、東京からオンライン参加の株式会社Will Lab(ウィルラボ)代表取締役の小安美和さんが、メッセージを寄せてくださいました。
小安さんは、前職のリクルートホールディングスで、2015年に子育て中の女性の就労支援事業「子育てしながら働きやすい世の中を共に創るiction!」を立ち上げ。その際に、ママワーク研究所の活動およびママドラフト会議に関心を寄せてくださいました。以来、ママドラフト会議開催時の企業向けセミナーの講師や実施アドバイザーを務めてくださっています。
「私はこんな仕事ができる」「こんな働き方をしたい」と、ステージ上で堂々とスピーチする登壇者たちの動画を見て、「涙が出るほど感動した」と、ママドラフト会議を知った当時のことを振り返る小安さん。
自分らしく働きたいという女性たちの熱い思いにインスパイアされて退職し、2017年に「女性×はたらく」をテーマに掲げたWill Labを設立したそうです。新たな道を進むきっかけとなった登壇者たちに、改めて感謝したいとあいさつしてくださいました。
ママドラフト会議登壇者の近況は?
次いで、過去のママドラフト会議登壇者を代表して、三好さん(2015年)、亀崎さん(2018年)、中本さん(2019年)、山口さん(2021年オンライン開催)、樋口さん(2021年福岡女子大会場)の5名が、ママドラフト会議に出場した当時のことや近況についてお話しくださいました。
三好さんは、ママドラフトに参加することを家族に一切言わずに登壇したそう。自分のやっていることをどう伝えたらいいか分からなかったと当時の心境を話しました。非正規や短時間正社員などさまざまな働き方を経て、現在は人材コンサル会社でキャリアコンサルタントとして、個人と組織の相互成長を支援しています。
「キャリアを積むにつれ、自分自身も人に相談できるようになりましたし、相談を受けることで成長していると感じています」
亀崎さんは、小学生の双子のママ。フリーランスとして働きながらママドラフト会議に登壇。現在はずっとやりたかったという、三つ子や双子など多胎児を育てるママたちをサポートする一般社団法人「tatamama」を立ち上げ、理事として活動しています。
「自分の子どもが小さい時にほしかったサポートを、今困っているママたちのために実現したいですね」
中本さんは、ママドラフト会議では直接就職に結び付かなかったものの、その後再就職を果たしました。そして、コロナ禍に今後の働き方について考えた結果、大学に入り直し、社会福祉士の資格を取得。現在は福祉関係の仕事をしているそう。
「登壇にあたり、キャリアの棚卸しをしたことで、自分では気づいていなかった強みやママとしての経験も仕事に役立つことを教えてもらえました」
山口さんは、オンライン開催時の参加。転勤族などの理由で働くことは考えていなかったそうですが、テレワークならと一歩踏み出しました。ミートアップで出会った企業に再就職し、現在はフルリモートながら管理職として活躍しています。実は、山口さんが登壇時にコンシェルジュとして伴走したのが、三好さんでした。
「ずっと自分のキャリアは大したことないと思っていたけれど、三好さんがコンサルをしてくれたおかげで、フルリモートで管理職という新たな働き方チャレンジできています」
樋口さんは、現在フルリモートでコンサルティング会社に勤務。一般事務に加え、クライアント企業のSNS運用やホームページの修正、ビジネスマナーの研修講師など業務の幅を広げています。前々からやりたかったWEBデザインの勉強にもトライし、今後の仕事に役立てたいとのこと。
「ママドラフト会議に参加することで、何歳になっても失敗を恐れず挑戦していく勇気が大事だと学びました。 これからも努力重ねていきたいです」
「ママワークともにプロジェクト」より調査発表
「ママワークともにプロジェクト」とは、ママワーク研究所のメンバーとともに活動しながら女性就労支援のエッセンスを受け取っていただくプロジェクト。多様な視点からの支援活動の広がりを目的としています。
公募で集まった10名の参加者が3つのチームに分かれ、それぞれの実現したいことを共有。リスキル講座やAIに関するセミナーなどの運営サポートをしたり、発達障がい児を育てながら働きたいママのための情報交換会を連携して開催したりしました。
そしてこの日、調査チームからは、「育児期女性のキャリア 理想と現実2024」というアンケート調査について報告がありました。ママワーク研究所としては11年ぶりの大規模な調査です。
・女性の就業率は上がっているものの、依然として配偶者の転勤や家庭の状況で、これまでと同じような働き方を継続することが難しい環境にいる女性も多い。
・その中で、テレワークやフリーランス、副業など、柔軟な働き方を開拓している。
・フリーランスや起業、役職あり正社員が仕事の満足度が高い。自分で仕事のかじ取りができ、主体的に働けていることが理由と推測される
・シングルマザーがキャリアを築いていくには、柔軟な働き方のさらなる推進、キャリアパスの多様化、賃金公平性の確保、メンター制度や家事代行サービス利用時の助成などが必要。
・障がい児を育てながら仕事をしている女性に対しては、子どもの預け先の拡充のサポートが求められる
といった、調査結果と考察が発表されました。最後に、
「ママだからと我慢するのではく、大変なことは大変と言っていいし、やりたいことはやりたいと声を上げよう 。繋がろう、シェアしあおう。1人ひとりの声は小さいけれど、そんな小さい声の「自分ごと」が人とつながることで「私たちごと」になり、「世の中ごと」になるはず。ともに社会を変えていきましょう」
という力強い言葉で締めくくられました。
半年間にわたって活動した「ともにプロジェクト」は、この日が最終日。田中理事長より皆さんに修了証が手渡されました。修了後もそれぞれのフィールドで、女性活躍支援に取り組んでくださることを期待しています。
ママドラフト会議を陰で支えてくれたパートナー・サポーター
さらに、おいしい食事をいただきながら、ひとことPRタイムも。
今年9月に飯塚で行われるママドラフト会議の開催パートナーであり「伴走型子育てサロンHugCome fam.」副代表の大村恵美さんや、元ママワーク研究所理事で「株式会社オフィスat」専務取締役の阿部博美さんなど、パートナーやサポーターの皆さんも近況報告をしてくださいました。実は阿部さんは、ママドラフト会議の名付け親。「スター誕生」というかつてのテレビ番組から発想した裏話も披露し、会場の笑いを誘っていました。
ママドラフト会議を開催してこられたのは、このようなパートナー・サポーターの方々が陰で支えてくださるからこそ。「福岡女子大学・女性リーダーシップセンター」副センター長の品川啓介教授と、「株式会社パソナ」で福岡県女性IT人材育成事業に携わる宮嶋京子さんは、以下のように話してくださいました。
品川さん
「私はイノベーション論を専門としています。1+1=2ではなく、3にも4にもなるのがイノベーション。ママドラフト会議の『決意表明+ドラフト』は、1+1=3,4,5でまさにイノベーティブだと思います。参加した前と後では、自身のキャリアや生き方に対する向き合い方が全く変わるのが素晴らしいこともいいですね。登壇者の決意表明は自己変革をもたらす点ではTEDにも似ていますが、ママドラフト会議は広く門戸が開かれているのが良い点だと思います」
宮嶋さん
「弊社は創業49年目になりますが、設立時から女性のキャリア形成は事業の根幹にありました。 ですから、最初にママドラフト会議を知ったときは、本当に斬新で私たちもこんなことができたらいいなと感じました。2023年からはサポーターとして関わらせていただき、新しいかたちで女性支援ができて楽しいですし、大変意義のあることだと感じています」
会の最後に、「NPO法人福岡ジェンダー研究所」理事の倉富史枝さんからもあいさつをいただきました。田中理事長がママワーク研究所立ち上げる以前から、薫陶を受けてきた方です。
倉富さんは、能力があっても埋もれている女性がいまだ多いこと、ジェンダー平等は環境を変えないと解決できず、そのためにはワークライフバランス進めることが重要とスピーチ。さらに、「NPOの活動は継続することが何より難しいなか、ママドラフト会議を10年間続けて、女性たちのエンパワーメントの場となっていることに感銘を受けています。これからも続けてほしい」とエールを送ってくださいました。
3時間があっという間に過ぎた、盛りだくさんの大同窓会。ママドラフト会議に挑戦してくださった皆さんのチャレンジ精神・ポテンシャルの高さに勇気をもらい、志を同じくする方々と協働させていただいた喜びを再認識するひとときでした。