2024年度「子育て期女性のキャリアに関する理想と現実」調査報告
育児期の女性 ライフステージに合わせ多様な働き方
一方で 家事・育児の負担は女性に偏る
~ママワーク研究所 2024年度育児期女性のキャリア調査結果を発表~
<調査で分かったポイント> 【キャリアコースは20パターンも存在】 同じ働き方の継続が難しいという課題と、柔軟な働き方が増えたという変化が共存 【家事・育児の分担は「妻が7割以上」が約70%】 依然として女性の負担が大きい 【3割が副業を持つ、8割が在宅勤務に高い意欲】 柔軟な働き方を自ら開拓する姿も 【シングルマザー、障がい児ママに 支援の充実を】 シングルマザーは生活安定を重視、障がい児ママは子の預け先の有無が最優先条件
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NPO法人ママワーク研究所(福岡市)は、2024年度『子育て期女性のキャリアに関する理想と現実』調査プロジェクトと題し、育児期の女性たちの本音を探るアンケートを実施し、調査結果を公開いたしました。
※調査対象:末子が小学生以下の女性で、就労希望がある、もしくは就業中の方
<なぜ調査したのか>
昨今、育児休業等両立支援制度の拡充や、在宅勤務など柔軟な働き方が広がり、育児期の女性が置かれる就業環境は、ひと昔と比べて大きく変化しています。一方、地方での再就職の難しさ、キャリアアップと子育ての両立、シングルマザー、障がい児養育とキャリアの両立など、抱える課題は数多く存在します。ママの「働く」を応援するサポーターとして2012年に発足したNPO法人ママワーク研究所では、様々な環境に身を置きながら子育てをする女性たちが理想のキャリアを実現するために、今、彼女達を阻む課題は何か、彼女たちはどうなりたいと希望しているのかについて、アンケート調査を実施しました。
<調査結果の概要>
■育児期女性たちの現実とは
・育児期の女性たちがたどるキャリアコースは20ものパターンがあることがわかりました。正社員から非正規雇用や離職、フリーランスなど、ライフステージの変化に合わせて雇用形態を変え、キャリア形態は複雑かつ多様化しています。背景には、子育て、パートナーの転職、家庭状況などが理由で離職せざるをえない状況や、これまでと同じ働き方の継続が難しいという点があるようです。
・また、パートナーとの家事・子育ての役割分担比率については、家事:「妻が70%以上と回答した割合は76%」、育児:「妻が70%以上と回答した割合は69%」となっており、依然として女性の家事・育児の負担が大きい実態がわかりました。
■育児期女性たちの理想とは
・調査では、33.6%の方が本業以外の副業を持っていました。また、在宅勤務(テレワーク)への意欲も87.8%と高く、勤務時間を主体的かつ柔軟にコントロールしながら、自らが求める働き方を実現するために、フリーランスや自営業といった新しい働き方を開拓している傾向にあることがわかりました。
・また、就労中の女性が仕事を選択する際に重要視することは、【やりたい仕事 > 休暇のとれやすさ > これまでの経験】という結果でした。時間や場所など、様々な制約がある中でも、自己実現の意欲が高く、キャリアを前向きに築いていきたいという女性たちの気持ちが表れていると言えます。これを裏付ける結果として、フリーランスや自営業、法人経営に従事している女性たちのやりがい度は高い傾向にある一方、パートタイマーや契約社員の女性たちのやりがい度は総じて低いことがわかっています。
■シングルマザー・障がい児ママの実態
・シングルマザーの雇用形態としては、正社員の比率が最も多く、収入は一見安定しています。しかし、最重要視することのトップは「緊急時に休めること」で、自己実現よりも家族の生活や安定を重視している傾向があるようです。
・障がい児ママは、収入501万円以上を希望する比率が高い結果となっていました。しかし、目指す収入と実際の収入の乖離が顕著で、子の預け先の有無を最優先条件とする傾向が高く、勤務時間の制約がある中での賃金向上が課題となっています。
・就業率
高い就業率:9割以上の女性が何らかの仕事を持っている
・キャリアコース
ライフイベントによって雇用形態を変え、複雑かつ多様な雇用形態を選択している
・就業時の重視ポイント
自己実現重視がトップも、「緊急時に休むことができること」も重要視している
・柔軟な働き方
3割が副業を持ち、8割が在宅勤務へ意欲も示し、多くが柔軟な働き方を希望している
・家事や育児の負担
家事・育児の役割分担は依然妻側の比率が高い傾向にある
・仕事のやりがいと課題
仕事のやりがい満足度は総じて高い
中でも個人事業主や法人経営者の満足度の高さは顕著
課題として、時間的制約をあげる人が多く、またキャリアアップへの不安も強い傾向
・雇用形態の満足度
フリーランス・自営業、管理職社員、法人経営の雇用形態の満足度は高いが、
パートタイマー、アルバイト、派遣社員の雇用形態への満足度は低く、両者の乖離が顕著
・シングルマザー:働き方の満足度
働き方の満足度は、全体が67%に対してシングルマザーは42%と低い
就労時に重視することが、全体では「やりたい仕事」が最多であるが
シングルマザーは「緊急時休むことができる」が最多なことから
自己実現よりも生活の安定と家庭のバランスを優先し仕事を選んでいることが伺える
・障がい児ママ:働き方の理想と現実
勤務時間の視点では、8時間(残業0)の希望が半数近いが
実際は7割近くが8時間未満となっている
働き方の課題の背景には子の預け先の有無が大きく影響している
<考察>
育児期の女性が描く理想の働き方を実現するには、たくさんの課題が存在していることが分かりました。
また、置かれている環境によって、希望する条件も異なり、雇用形態の実態と理想は、複雑かつ多様化しています。女性たちがその可能性を存分に発揮し、自分らしい理想の働き方を実現するには、部分的な課題解決ではなく、企業の理解の他にも、地域社会の支援や妻のキャリアに対するパートナーの理解や協力など、多方面の視点から課題解決を模索し、持続可能な雇用形態が実現できる環境整備が必要となっています。また、当事者の女性たち自身が、スキル取得などを通じて自身の市場価値を高め、収入向上の課題を自ら解決する視点も大切となります。
シングルマザーや障害児ママが置かれている実態も浮き彫りになりました。シングルマザーには、経済的自立が必要な彼女たちがキャリアを築きやすくするためには、柔軟な働き方の推進だけでなく、賃金公平性の確保、メンター制度の導入、ベビーシッターや家事代行利用時の助成など、多様な支援と両立への理解が求められているようです。
障がい児ママについては、就業時間をより多く確保するために、子供の預け先の拡充や柔軟な働き方のサポート推進が求められているようです。
<調査概要> 子育て期の女性たちが今、自分らしいキャリアの実現を阻む課題は何か、どうなりたいと希望しているのか、率直な声を聴取し、ありたい未来を共に創っていくための基礎情報収集を目的に実施。 調査地域:全国(福岡県がメイン) 調査手法:インターネット調査 調査対象:末子が小学生以下の女性で、就労希望がある、もしくは就業中の方 (有効回収数:154名) 調査時期:2024年5月20日(月)~6月16日(月) 企画分析:NPO法人ママワーク研究所 実査集計:NPO法人ママワーク研究所
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※本調査は、当研究所が育児期女性の就労支援の次世代人材育成事業として2024年2月〜7月に実施した「ママワークともにプロジェクト」の参加メンバーによる研究活動として実施いたしました。 →成果発表の様子はこちら